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―― ムーミンとの出会いは。

1969年度版の再放送かな、物心ついたときからテレビでアニメを見ていましたね。
かなりお世話になった記憶があります。
大学に入るくらいまで日本のアニメだと思っていました(笑)。
そもそもカバだと思っていましたし(笑)。
ムーミンの家とかニョロニョロとか、あの不思議な、独特の世界観がとても印象に残っています。
それからは大学生くらいに原作に触れる機会があったくらいで特に思い出すことも無かったのですが、仕事で北欧を意識するようになってから作品として観る機会があって、 その時はストーリーとかキャラクターと言うよりも、絵、トーベの描くビジュアルの世界観にすごく惹かれたんですよ。
まあ、とにかく彼女は絵が上手い。
細かく描き切られたその絵に強烈に惹かれましたね。

―― ストーリーについては、どんな印象ですか?

あくまで個人的な見解ですが、フィンランドはもともとスウェーデンとかソ連に侵略されて、打ちのめされた歴史がありますよね。
その時の暗い気持ちがすごく良く出ているなと思います。
よくフィンランドのファブリックはマリメッコに代表されるようにデザインが大きくて派手な印象がありますが、僕には気候的にも歴史的にもその抑圧された状態からくる幻想というか、「早く春がこないかな」「自由になれないかな」と言った想いから、あのような柄が描かれることが多いような気がします。

ムーミンも幻想というか、幻覚というか、辻褄の合わない世界がすごく面白い。
コミックでも実際にはありえないような展開がすごく多いんです。
風刺が効いていて、しかもそれがちょっと狂気的。
能天気な明るさが売りの漫画じゃないところにも惹かれますね。

とにかく現実的ではない、全くの別世界なんだけれどもなんとなく身近に感じてしまう、不思議な世界なんですよ。

―― デザイナーとしてはいかがですか?

絵的にはかわいらしいものを描きながらもかわいらしくない、なりすぎない感じがすごく好きですね。トーベのそういうさじ加減がすごく好きです。
ストイックというかたまにちょっと哀しげで我慢している感じと言うか。
自分も動物とかを描くときに、一生懸命かわいくならないように描いてるんですよ実は(笑)。

あと、テクニカルな部分。
実は2010年の冬頃かな、ヴィンテージファブリックコレクターの知人に1950年代のムーミンの生地を見せてもらう機会があったんですが、いやもう、とんでもなく感動しました。
僕はそれまで生地の白場を残さない、白地を見せないプリントにこだわっていたんですけど、このトーベのデザインは生地自体の素の色を1色として捉え、その白場をどう上手く使い見せるかというデザインなんです。
これはちょっとやってみたいなと思いましたね。
今回こういった形でお話を頂いたんで是非チャレンジしてみたいと思って、正々堂々と真似してみました(笑)。

―― デザインするにあたって意識したのは。

トーベの世界観は絶対に崩さない様にと言うのが大前提で、トーベがデザインしたんじゃないかと思われるような、版の数を少なくして白場を活かしたりという技術的な部分はかなり意識しましたね。
とはいえ原作からそのままを抜き出すのでは意味がないというか、世界観を変えないながらも新しいムーミンを、僕が思い描くムーミンを描きたいと思って創りました。
このデザインをご覧になる方には是非、かわいいだけじゃない、トーベ・ヤンソンが描く摩訶不思議なムーミンの世界観を感じて頂ければと思います。

―― 鈴木さんにとっての北欧とは。

ずっとあこがれの地でしたね。
大学を卒業して日本のインテリアテキスタイルの草分けでもあった粟辻博さんのデザイン室に入ったのですが、粟辻さんご自身がとても北欧デザインが好きで、ご自宅の食器と家具とか、 北欧のものが多くて、粟辻さんを通して北欧に触れる機会がすごく多かったですね。
北欧漬けじゃないけれども、若いころに師匠を介して北欧デザインの洗礼を受けました。

そんな僕にとって、ムーミンはあこがれの地を象徴するアイコンなんですよ(笑)。

幼少時から、アニメでムーミンに慣れ親しんでいたという鈴木さん。
デスク周りにもムーミンや北欧にまつわる品が並んでいる。

デザインは、まず愛用の手帳にイメージをスケッチするところから。
仕上がりは全く異なることもある。

ハンカチの図案に登場するムーミンたちは、すべて原作からポーズを抜き出して描かれている。

鈴木さんが感動したという、ムーミンのヴィンテージファブリック。布の白場を活かしたデザインが特徴的。トーベのサインも入っている。

1訪問時期は9月中旬。にもかかわらずフィンランドは既に気温10度そこそこ。
この日は小雨の降る肌寒い中ムーミンキャラクター社にお邪魔しました。
入り口のドアにはムーミンがお出迎え。

2かなり緊張しての対面でしたが、ソフィアさんはとてもにこやかな、物腰の優しい方でした。
「はるばる良く来ましたね」と言って歓迎してくれました。
まず最初に通されたショールームはまさにムーミンワールド。様々なムーミングッツ以外にもトーベヤンソンの描いた油絵なども飾られており、もう目が釘付け。
そんな中ムーミンワールドの中でソフィアさんは昔の資料などを見せてくれ、トーベヤンソンの話やムーミンにまつわる話を丁寧に説明をしてくれました。

3別室に移っていよいよデザインのチェック。ソフィアさんは想像以上に気に入ってくれて、こちらが戸惑うほどの賛辞を受けました。
「トーベ本人が描いたもの以外では一番すてきだ!」とまで。

4「この絵をここのショールームに飾っておくからサインをしてちょうだい。」と、まさかのお言葉。緊張しながらサインをする私の図。


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